書道で用いる筆は数多くの種類があり、書く文字の大きさや書体、腕の習熟度によって使い分けます。以下に、基本的な筆の種類について紹介いたします。
筆の分類
- 産地(和筆・唐筆)
- 穂の太さ
- 穂の長さ
- 穂の形状
- 毛の材質(剛毛・柔毛・兼毛)
これらの違いをよく理解し、用途に応じて適した筆を選ぶ必要があります。
初めは半紙での練習が中心となるので、兼毫(やや硬め)中鋒の大筆(3~4号)と小筆(7~10号)を用意しておくと良いでしょう。
筆の産地
和筆
日本四大産地
・熊野筆 ― 広島県安芸郡熊野町
・川尻筆 ― 広島県呉市川尻町
・豊橋筆 ― 愛知県豊橋市
・奈良筆 ― 奈良県奈良市
唐筆
中国三大産地 唐筆
・上海工芸・善璉湖筆 ― 浙江省湖州市
・武林邵芝巌・李鼎和 ― 浙江省杭州市
・蘇州湖筆 ― 江蘇省蘇州市
穂の太さ
穂の長さ
穂の形状
固め筆 穂先の毛質が異なる小筆のように、命毛を中心に外側に白い毛を巻いて作られた筆は根元から糊で固められており「固め筆」といいます。穂先1/3程度をおろして使い、使用後は紙に水を垂らしてその上で書くようにして墨を落として、形を整えて乾かします。
捌き筆 毛質が同一で糊で固めていない筆を捌き筆といい、根元まで墨を付けて使用します。近年では、販売時に見た目を良くするために糊で固められている場合も多く、ぬるま湯で糊を落としてから使用します。使用後は、根元を良く揉むようにして、墨をしっかりと洗い落とします。
毛の材質と特長
- 山羊毛 ― 白色、柔毛
- 馬毛 ― 茶色、剛毛
- 鹿毛 ― 茶色、筆の腰に使用される
- イタチ毛 ― 茶色、弾性あり、仮名細字用
- 兎毛(紫毫) ― 茶色、弾性あり、仮名細字用
- 狸毛 ― 茶色、弾性あり、仮名細字用
- コリンスキー毛(鼬毛) ― 茶色、弾性あり、仮名細字用
- 玉毛(猫の毛) ― 茶・白色、柔らかく、弾性やねばりがある
- ナイロン ― 水筆や筆ペンに使われている人工毛。まとまりの良いものも増えてきましたが、毛質は様々。
筆のお手入れ
筆おろし
➀固め筆 根元を固めたまま使う筆は、指で軽く穂先1/3程度をほぐして使います。
➁捌き筆 糊で固められていることも多く、その場合はぬるま湯で糊を落としてから根元まで墨をつけて使います。
洗い方
➀固め筆 紙に水を垂らし、その上に線を書くようにして墨を落としていき、なるべく墨が残らないようにして形を整えて乾かします。
➁捌き筆 根元に墨がたまりやすいので、根元をよく揉むようにして流水で墨をきれいに落とし、水分を拭いてから吊るして乾かします。まれに石鹸を使う方がいますが、油分が抜けて毛が乾燥して切れやすくなったり、ゴワついて書きにくくなるので、特に使わなくて構いません。
注意点 筆を使用後、キャップをしたまま放置すると、カビが生えたり、墨が腐ったり、乾燥して筆がカチカチに固まったりしますので、筆キャップは一時的な乾燥防止や持ち運び用として、あくまでも短時間の使用に留めましょう。