硯の分類
- 産地(和硯・唐硯)
- 材質(石硯・陶硯・ガラス硯・セラミック硯)
- 形状・サイズ(1 面硯・2 面硯・墨池)
硯の産地
唐硯
唐硯では、端渓硯、歙州硯、洮河緑石硯、澄泥硯が有名で中国の良硯の四宝とされている。
端渓硯(たんけいけん)
広東省肇慶市で採掘された石で、紫がかった色が多く、石紋や石眼が見られ、美術品としての価値が高く評価されている。現在は採掘されていない。
- 老坑:最高級の硯材。一般的には唐代末から宋代には「下巌」、明代以降は「水巌」、康煕年以降は「老坑」と呼ばれていた。
- 坑仔巌:老坑に次ぐ良品。「康子坑」とも呼ばれる。
- 麻仔坑:清時代乾隆年間に採掘開始。かつては老坑に匹敵するという評価もされた。
- 宋坑:宋代に採掘開始。
- 梅花坑:色合いに趣はあるが硯材としては下級とされている。
- 緑石坑:あまり良質ではない。
歙州硯(きゅうしゅうけん)
安徽省黄山市の黄山のふもとで採掘された石で、色は黒っぽく石質は硬め、羅紋のような石紋が見られ、爪でたたくと金属音のような高音がする。松煙墨を磨るのに最適とされている。
洮河緑石硯(とうがりょくせきけん)
北宋中期の洮河(甘粛省)で採掘された石で、石の色は黄緑色。鋒鋩が強く良質の硯とされましたが、氾濫により採掘場所が不明となり、採掘されなくなったため幻の名硯と言われています。
澄泥硯(ちょうでいけん)
陶硯だと考えられてきたが、実際には蘇州霊巌山から採れる自然石。
和硯
和硯の赤間硯と雄勝硯の2つは国の伝統工芸品指定を受けています。
赤間硯(あかますずり)
山口県下関市や宇部市周辺で採石される赤褐色・紫色の緻密 な岩石。平安時代末(1191 年)に源頼朝が鶴岡八幡宮へ奉納した赤間硯がある。鋒鋩が均一に立っており、墨のおりが良い。
雄勝硯(おがつすずり)
宮城県石巻市雄勝町で採石される純黒色の硬質粘板岩。室町時代から生産されており、圧縮・曲げに強く、給水率が低いため、経年変化に強い。玄昌石とも呼ばれます。
土佐硯(とさすずり)
高知県幡多郡三原村で採石される青黒い硯。
雨畑硯(あめはたすずり)
山梨県南巨摩郡で採石される黒色の緻密な粘板岩。
硯の大きさ
天然石をそのまま活かして成形するため大きさはバラバラですが、規格サイズもあります。メーカーによって若干の差がありますが、一般的には下記の通りです。 1 吋( インチ)= 約2.5cm。
- 3 吋 縦7.5cm× 横6.0cm
- 4 吋 縦10.0cm× 横7.0cm
- 5 吋 縦12.5cm× 横8.5cm
- 6 吋 縦15.0cm× 横10.0cm
- 7 吋 縦17.5cm× 横11.5cm
- 8 吋 縦20.0cm× 横13.0cm
- 9 吋 縦22.5cm× 横14.5cm
- 10 吋 縦25.0cm× 横16.5cm
和硯の伝統的なサイズ
- 四五平 (しごひら) 約 135cm × 75cm
- 五平( ごひら) 約 150cm × 75cm
- 五三寸 (ごさんずん) 約150cm × 90cm
細字には3 ~5吋の小さい硯、半紙には6~7吋の硯、条幅には8~ 10 吋の大きい硯が向いています。
墨の磨り方
硯のくぼみは海といい、磨った墨を貯めておく部分で、平らな部分は陸といい、墨をする部分です。
この陸部分に3~5ml程度の水を垂らし、大きく円を書くように墨を磨ります。硯の表面には鋒鋩という凹凸があり、そこに墨が当たることで墨の粒子が削れて水に溶けて墨が出来ます。
墨は湿気が大敵なので、墨を斜めに傾けて磨り、少ししたらまた反対の面に持ち替えて、墨が図のような形になるように墨を磨っていきます。
淡墨を使いたい場合にも、しっかりと濃くなるまで墨を練り、粒子を細かくしてから薄めて使います。粒子が粗いと墨色が冴えないので、手を抜かず丁寧に磨ると良いでしょう。
また、墨をする動作は肩から腕を大きく使う動きで、運筆の基礎練習にもなるので、ぜひゆっくり丁寧に磨って腕を磨いてください。
硯の取り扱い
洗い方
使い終わったら、残った墨をふき取り、スポンジや柔らかい布で洗います。洗い終わったら、伏せて日陰で乾かします。
鋒鋩を立てる
硯の表面には鋒鋩という目が立っており、研磨によって摩滅して墨のおりが悪くなってきたら、硯用の砥石で硯面を研ぎ、鋒鋩を立てます。